稲田大学 体温・体液研究室

ヒトの温度と水に関わる問題を解決する

Waseda University Body temperature and Fluid laboratory

2022/07/28 Journal Club

今回は研究員の渡邊が担当しました.
Caffeine alters thermoregulatory responses to exercise in the heat only in caffeine-habituated individuals: A double-blind placebo-controlled trial. Lindsey A Hunt, Lily Hospers, James W Smallcombe, Yorgi Mavros, Ollie Jay.Journal of Applied Physiology, 2021, 131(4) 1300-1310. doi: 10.1152/japplphysiol.00172.2021
体温調節実験時にはカフェイン摂取の制限を依頼されることが常ですが,このカフェイン摂取が運動時の体温調節機能に影響を及ぼすかは意外と未だ議論されています.コーヒー等に含まれるカフェインは血管拡張に寄与するアデノシンに対する拮抗作用を有します.故に,急性的なカフェイン摂取は皮膚血流の低下や,それに伴う発汗作用を変化させ,結果的に運動中の体温調節に影響を及ぼす可能性があるため,本仮説検証が第一の目的でした.加えて,上記の仮説を習慣的なカフェイン摂取の有無により検証をすることが第二の目的でした.
カフェイン常習者および非常習者をリクルートし,日を変えてプラセボ(PLA)あるいは中容量カフェイン(CAF, 5mg/kg)摂取をさせた後に,仕事量を統一させた定常運動を暑熱環境下(30℃・30%RH)で60分間実施し,その際,深部温,皮膚温,乾性熱放散,局所発汗率・皮膚血流および全身発汗量を主指標として測定をしています.
結果,カフェイン常習者は,PLAと比較し,CAFでは,運動時の皮膚血流量が減少し,皮膚温も低下した結果,深部温が増加する結果となりました(非常習者はPLAとCAF間に差なし).しかし,局所発汗率や全身発汗量,乾性熱放散はカフェイン常習者および非常習者に関わらず,CAFおよびPLA摂取時に変化はありませんでした.
以上の結果から,カフェインは運動時の体温調節機能を変化させる可能性があるため,これまで実験前に注意喚起されていた事柄は正しいこと,また,暑熱環境下における熱中症罹患を防止する意味合いからもカフェイン摂取には注意が必要なことが本研究から示唆されています.