BodyTemperature & Fluid Laboratory
Waseda University

Research for our well-being
Waseda University Body temperature and Fluid laboratory

インフルエンザと新型コロナウイルス

トランプ大統領は、最初はインフルエンザのほうが問題だって言ってましたよね、しかし、現実が彼の誤算を証明してしまいました。インフルエンザも人類は今のところ撲滅ではなく、かろうじての共存しか選択の余地がない厄介なものであるのは確かです。諦めに近いですね。

日本ではインフルエンザの致死率は年によって大きく違いますが(世界的には0.1%、その1/100ぐらいの推移でしょうか)、現在の日本での新型コロナウイルスの死亡者/感染者数に比べて、インフルエンザと比較されることが少なくないようです。しかし、インフルエンザの致死率は、ワクチンがインフルエンザのHN型の予想が正しかったか、インフルエンザ治療薬の選択などに大きく影響されていると思います。キーワードは予防的な医療介入(ワクチン)と治療に大きく致死率が依存しているのでそのまま読み取れないのです(単純に新型コロナの怖さと比較し難い)。この点で新型コロナウイルスは、根本的にインフルエンザとは違う視点で対策を講じないといけないのです。

インフルエンザの致死率が低く出る理由

①今のところ新型コロナの罹患者はウイルスの存在を半定量して測定するPCRのみによっておこなわれていること。PCRを行っている人は、明らかな呼吸器感染の有症者もしくは、その接触者という明確な証拠をもとに行われること。すなわち2段階のバイアスが罹患者確定までにかかっていることです。このため罹患者数は自ずと、実際の罹患者数より少なくなるのは自明のことです。

②一方インフルエンザは疑いのレベル(現在は発熱、感染症法では37.5度以上)で、居住地域や職場の発症事例があれば、簡単なキット(イムノクロマト法)で行われています。すなわち、検査母数が大きく違います。今の新型コロナウイルスは地域の集団発生があるので、熱がるだけでも検査してもいいぐらいですが、そうしたら、現状の体制でこの検査(PCR)の手間を考えると限界があるのは予想できます。

PCR検査の不備は、やはり解決されるべき問題点です。しかしながら、以下の点で新型コロナウイルスは、検査による罹患者の把握では解決できない大きな問題があり、これがインフルエンザと対比させて考えた場合に浮かびでる真の問題点かと思います。

③インフルエンザの場合、多くの場合、発症者からの感染が主であること。このため家族や職場で発生している、熱があるという条件でインフルエンザ疑いと診断し、隔離することで伝搬率がかなり低下することです。逆に言えば、目に見える検査をしなくても、臨床症状に気をつけていれば(医学の基本です)病院側も受け入れが可能だと言えます。シンプルな疫学情報の取得と臨床症状であたりがつくかと思います。

④新型コロナの場合、発症の潜伏期間でも、あるいは無症状の人でも伝搬させる可能性が報告されています。また一人当たりの伝搬人数は3人程度になるまでの事例があり、かなり強い感染能力があると言えます。インフルエンザとの大きな違いはここにあると思います。感染が予想できない、しかし、うつる確率は高いことです。医学的な観察は意味をなさない場合が多くあると言うことです。これだけの知見から言えること、対策は、唯一の感染源である人(ウイルス保有や発症の有無にかかわらず)と接触しないと言う結論になります。

⑤感染をおこせば一定の割合で発症しています。重篤化の割合も高齢者ではなくてもある程度はあり、ここで死に至らないのは医療のレベルに依存しています。特にもともとの免疫があるわけでも、薬剤があるわけでもないので、悪くなるのは個々の免疫の応答の差、あるいは初期のウイルスへの暴露の差ぐらいでしかないかと思います。医療関係者の努力により手厚い呼吸管理(サポートであり治療ではありません)で、自らの力でウイルスに打ち勝ち回復できるまで待つという方策です。この時点では重症のインフルエンザと違いませんが。

⑥繰り返しですが初期の防御機転となるはずの免疫がない(ワクチンがない)、あるいはウイルスの暴露量を減らす薬がないのです。もしかしたら、新型コロナウイルスに、初期段階で免疫がある人もいるかもしれませんが(でも証明されているわけでもないので、免疫は、そもそも最初にないとおもった方がいいでしょう)、たくさんウイルスに初期暴露されれば、必ず発症するのでしょう。そして一定以上の人が重症化すれば、病院は平等に治療はしなくなり、患者を選択するでしょう(天災や事故現場でもないのにトリアージの必要が、トリアージのマニュアルにない治療予後推定による(年齢や基礎疾患の有無)選択が生じるかもしれません)。致死率はインフルエンザより低いままかもしれませんが、その時は絶対的な罹患者母数と重症者、死亡者は増えてしまっているでしょう。

インフルエンザがある程度コントールできているのは、毎年、HN型が変わるもののある一定のパタンで交代で現れているだけで問題がないだけです。鳥インフルエンザなどの急激な変化は、今回の新型コロナと同じ現象を生み出す可能性があります。コロナは鼻風邪ウイルスぐらいにしか誰も思っていませんでしたが、動物のコロナはSARS MERSさわぎからかなり怖がられていました(いつかもっと広がる変異がでるんじゃないかと、家畜のコロナウイルスはそれ以前から重篤な感染源でした)。わたしの環境生理の立場からは、高温高湿度が解決してくれないかと期待をしていますが(これらは皮膚表面、気道粘膜、粘液による防御機転を助けてくれます)、でももうちょっとマシなこと対策を考えたいと思っています。MERSは結局風土病でおわりました。また、ウイルス全般に得意な侵入部位があり、それは多くの場合細胞にある様々な受容体です。コロナは肺の奥の奥、肺胞を取り巻く血管のレベルにあるため、インフルとは異なるたちの悪さを見せているのかもしれません。


最近では世界の地域ごとに新型コロナは型が違っていると報告がありました。RNAウイルスは変異しやすいウイルスですが、これが地域ごとの新型コロナウイルス感染症の予後の差の一因かもしれません。しかし、今できることは、できるだけ感染源(人)との接触を断つしかないのです。

これからの若い人たちの世の中を、自らの行動で潰して行くのは非常に辛いことです。もっと辛いのは、少なくとも平和を堪能してきた自分と自分より年上の世代が、少しの辛抱もできず、自らの欲求のために次の世代の幸福を壊してしまっている可能性があることです。